A silent observer
小林 俊介 / Shunsuke Kobayashi
ライフストーリー
1993年生まれ、東京都出身。
デザイナーの父に連れられ、幼い頃からアートや写真に触れる機会に恵まれた。新しいもの好きの父の手元には、いつも最新のカメラ。気がつけば、小林も自然とカメラを手にしていた。
今でも覚えている一枚の写真がある。親戚の集まりで、従姉妹の子どもたちが楽しそうにはしゃぐ様子を捉えた一枚だ。
「ほんとにいい表情してるなぁ」
それを見て父が放った何気ない一言が、控えめだった小林に自信を与えてくれた。小林は、写真を仕事にして生きていくということを真剣に考えるようになり、美大への進学を決めた。
「きっと社会に出ると、お金はあっても時間がない」
そんなことを考えていた学生時代。大学三年の夏休みに、ニューヨークへ一人旅に出た。すべてが初めての世界で、自分の心に素直に、無我夢中でシャッターを切った。帰国して写真を見返した時、好きだと思える写真は、「人」が写っている写真ばかりだということに気がついた。
「自分の写真で、自分の手の届く範囲の人たちを幸せにしたい」
賞のためでも、有名になるためでもない。届けて一番喜んでくれる、目の前の「人」のためにシャッターを切ることを大切にしたい。そう語る小林の写真には、被写体が持つそれぞれの美しさが、静かに収められている。